Adobe Digital Publishing特集

出版業界の「好機」となるか?

Adobe Digital Publishing フォーラム2011

昨年のiPad発売と最近のAndroidデバイスの爆発的な普及により、徐々に広がりを見せてきた電子書籍市場。様々なデバイスで電子書籍を目にする機会が増え、その規格も様々なものが登場しています。そんな中、アドビシステムズがこの春遂に市場投入する「デジタルパブリッシングスイート」はDTPを牽引してきた同社ならではの様々な工夫がこらされた、デジタル時代の出版に対応した製品になっているようです。
今回の特集では、このデジタルパブリッシングスイートについて、先月2月1日に六本木で行われた「アドビデジタルパブリッシングフォーラム2011」でのRicky Liversidge氏の講演内容による昨今の電子書籍を取り巻く状況と、この製品の概要をお送りしたいと思います。

デジタルパブリッシングフォーラム2011 基調講演

これから再び、デザインの重要性が注目される

Ricky Liversidge氏

最初にRicky Liversidge氏(アドビシステムズ)は、現在のアドビデジタルパブリッシングスイートの状況について、プレリリースプログラムを使って制作された出版物が、既にAppストアには100以上あり(そこには日本の出版物も含まれる)、さらに数十社が近日追加される予定だと説明。各社様々な実験を行っているが、その中の例としてWired誌の取り組みを取り上げ、タブレット向けの様々な工夫がこらされたWired電子版が、ペーパー版の売り上げよりも37%増えたことを紹介。電子版ならではの縦・横表現や、文脈にそって文章を強調する仕掛けが、読者との新たな関係を築くことになったと分析し、電子雑誌を作る際に「紙のまねごとではない」、「ただビデオとインタラクティブと紙を混ぜ合わせただけのものではない」電子出版ならではの新たな手法が求められており、これから再び、「デザインをすること」が重要な要素となるだろうと強調していました。

Webは出版社に対して優しい存在では無かった

Adobe Digital Publishing フォーラム2011

次の例として、そういったデジタルパブリッシングならではの自由な表現が、これまでWebに(自分たちのブランド価値を打ち出せないとして)消極的だったブランドの広告主を取り込み始めている例を紹介。その一例として、マーサ・スチュワート(アメリカで有名な生活雑誌)の「バウンドレスビューティー」という電子書籍にはティファニーが広告主として参加しており、同社が制作し、物語の文脈に合わせて挿入された印象的な広告コンテンツを紹介していました。またマーサ・スチュワートのその他の電子版雑誌についても、これまでの紙の広告掲載と比べて最大で3 ~ 4倍の費用対効果が出ていることを紹介。更にバーバリーやポールスミスといった伝統あるブランドが広告主として参加している状況を好感していました。またアドビ社内でも紙媒体と電子書籍を比較する独自調査(紙で5つの記事と広告を用意。同様に電子書籍で5つの記事と広告を用意してどちらが効果的かをテスト)を実施したところ、紙よりもデジタルの方が広告効果が最大で70%向上した結果を報告。こうした結果を踏まえ、電子出版は広告主に訴求することが出来る力があると強調し、Web広告の現状を「Webに期待されてきたのは、コンテンツを無料で提供することであるが、これでは投資に対しての見返りが期待できない。」とした上で、「デジタルパブリッシングが過去10年のWebの課題を克服できる新たな媒体になる可能性を秘めている」ことを強調していました。

出版社が購読者と直接やりとり出来る環境作りを

Adobe Digital Publishing フォーラム2011

最後にデジタルパブリッシングスイートで予定されている新たなビジネスモデルについても触れられました。まず現在の状況について、近いうちに80種類以上のAndroidモデルが発売され、タブレット型デバイスは爆発的に増加。アプリストアのコンテンツも増加していくが、今の環境は出版会社が購読者と直接関わりを持てる環境ではないと解説。そう言った状況の中でアドビシステムズとしては、出版社が独自で購読サービスを提供できる仕組みとして、雑誌を購入するときに課金することに加え、購読したアプリケーション内でも商品を販売出来る仕組みを用意していると紹介。こうすることで出版会社が購読者と直接関われる環境が実現すると説明していました。そして、この仕組みの日本向けモデルについて準備中ではあるが、日本独自の慣習に合わせた最適な仕組みを作れるよう現在努力していると述べるとともに最後に、「現在3,000社以上がプレリリースプログラムに参加し、アイデアを練って様々な実験に取り組んでいる。これは非常に健全な状況である」と述べ、今回のフォーラム参加者に対しても、早くプレリリースプログラムで電子書籍への取り組みを始めて欲しいと語り、今回の基調講演を終えました。

デジタルパブリッシングスイートを活用した作例が公開されてます。ぜひアクセスして見てください。
Adobe Digital Publishing Gallery

デジタルパブリッシングスイートとは??

既存の電子書籍と何が違うのか?※以下の内容は2月1日時点でわかっている情報をもとに解説してます。

ワールドワイドで広く使われてる電子書籍フォーマットはEPUBと呼ばれる形式です。EPUBはIDPFと呼ばれる国際団体が策定しており、現在のバージョンは2.0ですが、日本市場向けに重要な縦書きやルビに対応してません。(5月発表のバージョン3.0では対応する予定です。)一方、デジタルパブリッシングスイートはissueと呼ばれる形式です。InDesignからはEPUB2.0形式の書き出しも出来ますがアドビシステムズでは、いわゆる電子書籍はEPUB形式、雑誌やカタログなどより自由な表現が必要な媒体はissue形式で、という位置付けにしているようです。

デジタルパブリッシングスイートの特徴
  • 電子書籍フォーマット(EPUB)ではない。issue(イシュー)形式。
  • 動画・静止画・写真・イラスト・音楽を自由に配置した表現が可能
  • スクリプトなどの知識不要
  • インデザインオペレータが少々の学習で使う事が出来る
  • 制作・出版・購読(課金)までをトータルに実現予定

デザインパブリッシングスイートを使った電子書籍制作ワークフロー

デジタルパブリッシングスイートの制作システムは、Indesign CS5にいくつかのプラグインを追加して実現します。
現在はプレビューリリースプログラムとして、全てのプラグインが無償提供されてます。

  1. まずInDesignでページ制作をスタートします。
    タブレットの縦・横表示に合わせて、各ページ2種類づつ用意しても構いません。
  2. インタラクティブな要素(動画、音声、360°ビューイング、画像パン、パノラマ、Webビュー)を追加する際は、プラグインのInteractive Overlay Creatorを使って取り込み.swf形式で書き出したものをinDesign上に配置します。
  3. 出来上がったレイアウトファイルをプラグインのContent Bundlerを使って、.issue形式に変換します。
  4. 最後に.issue形式で書き出したファイルをiTunes経由でiPadに取り込めば終了です。iPad側にはApp StoreからViewer(無償)をダウンロードしておいて下さい。

PC側にインストールが必要なもの

iPad側にインストールが必要なもの

ToolGarageでは株式会社スイッチの鷹野雅弘氏による集中連載を行ってます。
【主な内容】
・電子書籍、電子雑誌の状況を整理するデバイス/フォーマット/制作手法
・InDesignをコアとした電子出版の制作ソリューション ePub、MCBook、Digital Publishing Suiteほか

集中連載 おさえておきたい電子書籍・電子雑誌の今

インデザイン単体と、含まれるスイート製品の参考価格

  • InDesign CS5
    InDesign CS5
    製品版 84,840円(税込)
    アップグレード 25,200円(税込)
    学生教職員版 27,300円(税込)
  • CS5 DESIGN STANDARD
    CS5 DESIGN STANDARD
    製品版 180,390円(税込)
    アップグレードA 80,640円(税込)
    アップグレードB 104,790円(税込)
    学生教職員 66,150円(税込)
  • CS5 DESIN PREMIUM
    CS5 DESIGN PREMIUM
    製品版 227,220円(税込)
    アップグレードA 94,920円(税込)
    アップグレードB 129,150円(税込)
    学生教職員 98,070円(税込)

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